冷凍保存と冷凍解凍を極めよう!CASE2( 魚介類 前編 )

目次
魚離れが加速する現代人と
我々が暮らす日本は 海に囲まれている島国のため、昔の食生活はおもに魚を食べる文化でした。
しかしこの10年間では、一人あたりの魚の消費量は3割も減ってきています。
すべての年齢層で「魚離れ」が進み、今後も減る一方とまで言われています。

刺身、寿司は大好きという人は多いはずです。
しかし、焼き魚や煮魚といった魚料理を敬遠する方は増えています。
その理由は部屋が魚臭くなる、骨を取るのが面倒、食べるのに時間がかかる、見た目が気持ち悪い、といったところでしょうか。
しかし、「調理した魚の味が嫌い」という人は少ないというデータもあります。
つまり、魚離れは食卓に出る魚料理がついマンネリになったり、調理したものを食べる機会が少ないことが原因のように思えます。
たとえば 魚の骨を取ってからチーズをかけて調理してみたり、刺身をカルパッチョにしてみたり、缶詰を使ってみるなど、ご自身が食べやすいようにアレンジしてみれば、魚を食べる回数が多くなり魚嫌いが少なくなっていくのではないでしょうか。
日本は長寿世界一が続いています。
その理由として、医療レベルが高く、健康意識が高いことなどが挙げられる一方、豆腐、納豆などの野菜タンパク質の他、脂肪が少なく高タンパク質のコラーゲンを含んだ魚介類の摂取量が他国に比べれば多いと言われています。
常に魚が食べられるような食生活を送れる事ができれば、大きな病気の予防にも繋がります。
年配の方はもちろん、小さなお子さんも魚を食べることを習慣にしていただきたいものです。
驚きの栄養素

魚の栄養素のメリットを一部ご紹介します。
- 脂質
魚の脂質には悪玉コレステロールを減らし、脳の働きが良くなり、血液をサラサラにするため、心筋梗塞の予防にも良い作用があります。
ちなみに肉は、脂質を摂りすぎるとコレステロール値が上がり、生活習慣病のリスクが高まるので他の献立と組み合わせて食べることが必要になります。 - DHA(ドコサヘキサエン酸)
血中のコレステロールを下げ、脳の発達促進や、脳卒中予防、認知症予防、動脈硬化の予防、抗がん作用、視力低下予防などに効果がある栄養素です。
アジ、サンマ、ブリ、サバなどに多く含まれる成分です。 - EPA(エイコサペンタエン酸)
血液をサラサラにします。血栓予防、貧血予防に役立つ栄養素です。
イワシ・ブリ・サバなどに多く含まれる成分です。 - アスタキサンチン
体内の抗酸化作用があり、免疫づくりに良い栄養素です。
鮭、真鯛、桜エビなどに多く含まれる成分です。 - その他
良質の動物性タンパク質・ビタミンD・ビタミンE・ビタミンB12・必須ミネラルのカリウム・カルシウム・マグネシウムなど。
このように魚の栄養素は体へのメリットが沢山あります。
ヘルシー志向な日本人だからこそ沢山食べ続けましょう。
新鮮で美味しい魚の選びかた
まずは、お店に並んでいる魚の選別からです。
この選別で美味しさが変わると言っても過言ではありませんので、以下の点に注目して選んでみてください。
丸魚(頭の付いた丸ごとの魚)を選ぶ
お店では切ってある魚(切り身魚)より、頭の付いた丸ごとの丸魚を選ぶほうがおすすめです。

切り身魚は時間が経過して鮮度が落ちていることがあっても、それを見極めるのは難しいです。
しかし丸魚でしたら、目、形、膨らみ、艶(ツヤ)などを見て鮮度を確認して買うことができます。
お店でも新鮮な魚は丸魚で売りたいはずです。
丸魚はココを見て選ぶ
- 「魚の目を見る」
新鮮な魚はにごりのない澄んだ目をしています。
白黒はっきりとわかれたきれいな目が、時間が経つにつれて変化してきます。
黒目は白く濁った様な色になり、白目は充血したように赤色が混ざってきます。
このような目の色の魚は選ばないようにしましょう。 - 魚の背中部分を見て選ぶ
美味しい魚は脂のノリで左右されるので、以下の魚を選びましょう。
◎[背中(身の部分)が膨らんでいる魚を選ぶ]
お腹の栄養を消化、吸収して、旨味である脂肪を背中に蓄えているので美味しいです。
×[お腹が膨らんでいて背中に膨らみが無い魚は選ばない]
栄養を吸収しても身に美味しさがまだ到達していないのでやめておきましょう。 - 全体的に艶(つや)がある魚を選ぶ
新鮮な魚ほど表面がツヤツヤして、模様がある魚はその模様がはっきりしています。
艶がない魚、ウロコや身がはがれている魚は避けましょう。
丸魚を自分でさばけない場合
魚屋さんやスーパーの窓越しに見える店員さんに頼めば、内蔵やウロコを取ってくれたり好みの状態に加工してくれます。
(店舗や時間帯によってはそのサービスをしていない場合もあります。)

しかし、本当は魚を捌くのも料理の技術であり醍醐味です。
まだやったことのない方は、ネットの動画でさばき方を見て学んだり、料理教室で学んでチャレンジしてみるのも良いでしょう。
魚を買ってからの注意
水の中にいた魚が水揚げされ、流通ルートを経てスーパーに並びます。
その過程では 氷詰め、冷凍、半冷凍、冷蔵などで鮮度を保つようにしてありますが、みなさんがスーパーで買ってから家に着くまでは無防備です。
買ったらいち早く家の冷蔵庫か冷凍庫に入れることを心掛けましょう。
魚を冷凍保存するために必要な物
魚の冷凍保存と冷凍解凍の方法を解説します。
魚を後日に食べたい場合は、冷蔵保存よりも冷凍保存をおすすめします。
用意する物は以下の通りです。
- ラップ
- ジッパー付の冷凍保存用袋またはポリ袋
- キッチンペーパー
- 金属トレー(ステンレス製・アルミ製など)
- 油性のマジック、冷凍した物に貼るラベル
魚の冷凍保存の基本

魚は冷凍しても栄養素はそのままなので、解凍してから食べても栄養素が半減しているわけではないのです。
そして、冷蔵保存では新鮮さは落ちてきますが、正しい冷凍の方法を使えば鮮度も保てます。
そのため、後日に食べる場合は冷凍がおすすめです。
魚は丸魚・切り身魚・刺身・加工品(おもに干物)に分かれます。
魚屋さんの冷凍庫は−30℃以下ですが、家庭用の冷凍庫は-18℃前後ですので、この温度での保存期間は2週間以内が理想です。
以下のポイントを抑えましょう。
(丸魚の場合は)内臓を取り除く
魚は内臓から傷んできます。
サンマなど内臓ごと焼いて食べる魚を除き、アニサキスの問題もあるため内臓は取り除いてから冷凍庫に入れましょう。
(または店員さんに取り除いてもらう。)
なお、このアニサキスは、焼き魚や煮魚のようにしっかり加熱調理をするか、24時間以上冷凍すれば問題ないです。
(大きな丸魚は)内臓だけでなく、ウロコとエラも取り除く
大きなウロコがある場合は食べた時に口に残ります。
解凍後に取り除くのは面倒なため、生の内に取り除いてから冷凍しましょう。
また、エラの中にあるジャバラのような部分も丸魚を調理する時は臭みの原因になるため取り除きましょう。
(またはエラの後ろ側のヒレ部分から頭ごと一緒に切り落とす。)
(丸魚は)水洗いをする
体の周りの水分に雑菌がついていることがあります。
傷む原因や臭みの原因にもなるので水洗いをしてから水分を拭き取ってから冷凍しましょう。
(丸魚は)料理によって加工する
料理によって二枚おろし・三枚おろしなどで使う場合は解凍後に使いやすい状態にしておくため、切ってからよく水分を拭いて冷凍します。
(丸魚も切り身も)しっかり包んで冷凍
魚は特に匂いがその他の食材につくことが多いので、1匹ずつ、または1切れずつ、空気が入らないようにしっかりラップで包み、ジッパー付の冷凍保存用袋またはポリ袋に入れます。
冷凍する時は金属トレーなどに乗せる
熱伝導の良い金属トレー(ステンレス製やアルミ製)の上に乗せて冷凍庫に入れると早く冷凍されます。
凍った後、金属トレーは取り除いても大丈夫です。
刺身はなるべくその日のうちに
刺身の場合は冷凍ものが解凍されて店に出ている物もあるため、一部を除きなるべく冷凍はせずにその日の内に食べることをおすすめします。
どうしても保存したい場合は、冷凍庫では凍りすぎます。
凍る寸前の状態を保つチルド室に入れて、翌日または翌々日までに食べましょう。
干物は生魚よりは日持ちする
干物は生魚ではないので、冷凍しなくても賞味期限は5日ほどもちます。
5日以内に食べるのであれば冷蔵保存でも良いかと思いますが、5日以上食べない場合はやはり冷凍が必要です。
それではより細かく、丸魚、切り身魚、刺身、干物ごとの正しい冷凍方法をご紹介します。
好きな大きさに切り分けよう!丸魚の冷凍方法
(様々な料理に)
- パックから出す。
- 内臓を取り除く、大きな魚はウロコとエラも取る。
- 水洗いをして周りの水分をキッチンペーパーでよく拭き取る。
- 使いたい料理に合わせて切る。
- 周りの水分をもう一度キッチンペーパーで拭き取る。
- 空気を抜くようにラップで包み、保存袋またはポリ袋に入れる。
- 日付と中身の種類・使う料理名を記入する。
- ステンレスなどの金属トレーに乗せて凍らせ、凍ったらはずしても大丈夫。
※冷凍期間は2週間まで
使い勝手が良い!切り身魚の冷凍方法
(煮物、焼き物、揚げ物などに)
- パックから出す。
- 周りの水分をキッチンペーパーで良く拭き取る。(水分が残らないように)
- 一枚ずつ空気を抜くようにラップで包み、保存袋またはポリ袋に入れる。
- 日付と中身の種類・使う料理名を記入する。
- ステンレスなどの金属トレーに乗せて凍らせ、凍ったらはずしても大丈夫。
※冷凍期間は2週間まで
意外と知らなかった!刺身の冷凍方法
(刺身・ヅケ・寿司・マリネなどに)
刺身用は冷凍されていたものが解凍されて販売されていることが多いので、なるべく冷凍せずにその日の内に食べるのがおすすめです。
それでも冷凍したい場合は、冷凍庫ではなくその一歩手前のチルド室へ入れましょう。
- パックから出す。
- 周りの水分をキッチンペーパーで良く拭き取る。
- さらにきれいなペーパーで包む。
- 空気を抜くようにラップで包み、保存袋またはポリ袋に入れる。
- 日付と中身の種類を記入する。
- 冷凍庫ではなくチルド室に入れる。
※チルド室での保存は翌日~翌々日まで
常備しておくのもおすすめ!干物の冷凍保存
(焼き魚・混ぜご飯・おにぎりの具などに)
干物の冷凍保存期間は加工の仕方でも変わってきますが、ここでは一般的な干物の冷凍でご紹介します。
- 一枚ずつ空気を抜くようにラップで包み、さらにアルミホイルで巻き、保存袋またはポリ袋に入れる。
- 日付と中身の種類を記入する。
- ステンレスなどの金属トレーに乗せて凍らせ、凍ったらはずしても大丈夫。
※冷凍期間は4週間まで
おすすめの解凍方法・おすすめできない解凍方法
冷凍した魚を解凍する場合は、
- 凍ったまま調理する
- 冷蔵庫で解凍
- 常温で解凍
- 袋のまま流水で解凍
- 電子レンジで解凍
が挙げられます。
『おすすめの解凍方法』
◎[冷蔵庫に移して解凍]
魚の大きさにもよりますが1~2時間位。
中心がまだ少し固まっている半解凍の状態で調理に入る。
◎[チルド室に入れて解凍]
冷蔵庫よりやや時間がかかりますが鮮度を保ちつつ解凍される。
中心がまだ少し固まっている半解凍の状態で調理に入る。
◎[水につけて解凍]
凍った魚を袋にいれたまま水に入れて解凍する。水が入らないように注意。
中心がまだ少し固まっている半解凍の状態で調理に入る。
意外と早く解凍されます。
◎[氷水に入れて解凍]
凍った魚を袋にいれたまま氷水に入れて解凍する。水よりゆっくり解凍する分、鮮度を保ちつつ解凍される。
中心がまだ少し固まっている半解凍の状態で調理に入る。
『おすすめできない解凍方法』
×[常温での解凍]
魚は肉と違って短時間で解凍するので注意が必要です。放置しすぎると魚が傷んでしまいおすすめできません。
×[解凍して再度冷凍したものを解凍する]
魚は肉以上に再度冷凍解凍すると新鮮さに欠けるだけでなく、臭みもでるのでおすすめできません。
豆知識① 魚がスーパーに並ぶまでの経路

より美味しい魚は水揚げされてからスーパーなどに並ぶまで、いかに新鮮さを保っているかが大事です。
漁港近くの魚市場は別として、おもに全国の魚の流通は簡単に表すとこのようになります。
水揚げ
↓
地元の市場
↓
輸送
↓
各都道府県の卸売市場
↓
小売店(スーパーなど)
↓
消費者
これらの流通経路をたどるため、時間と共に鮮度は少しずつ落ちてしまうかもしれませんが、徹底した温度管理のもと流通しているため比較的鮮度を保つことができています。

豆知識②「海なし県」で海鮮は!?
「海なし県」で食べる魚は、何も川魚ばかりというわけではありません。
都道府県別の「人口10万人あたりに換算される寿司屋の店舗数ランキング」をご存知でしょうか?
意外や意外、海なし県である内陸の山梨県が全国1位です。
これはその昔、車も無かった江戸時代に、江戸の街から現在の山梨県甲府市に移住した人々が「江戸前寿司を食べたい」と、足や馬を使って駿河湾から生魚を運んでいたのがきっかけだそうです。
当時の寿司は生魚を酢で締めたり醤油に漬け込んだりする「保存食」として食べられていたため、内陸である甲府市は寿司文化が特に普及したとされています。
生魚の鮮度を保ちつつ運べる地域の限界線を「魚尻線」と呼ぶのですが、当時、駿河湾からの魚尻線の限界が山梨県甲府市でした。
生魚が運べるギリギリのライン、そして寿司は保存が効く。
そんななごりもあるため、山梨県民が今でも寿司を愛食しているのはうなずけます。
ちなみにマグロの消費量でも、同じく海なし県である群馬県や栃木県が毎年トップ5に入ります。
もはや、海があるかないかという線引きは皆無に等しくなっています。
海なし県でも直接漁港から買い付け、漁港近辺のお店と遜色(そんしょく)ないくらいに魚の美味しいお店は沢山あります。
どのスーパーや飲食店でも、新鮮で美味しい魚を消費者に食べてもらおうと努力しています。
そのありがたみを感じながら、海なし県在住の私は今日も魚をいただきます。

冷凍保存と冷凍解凍を極めよう!魚介類 前編 まとめ

海の幸はとにかく種類が豊富です。
魚だけではなく、タコやイカなどの頭足類、エビやカニなどの甲殻類、アサリやホタテなどの貝類、ワカメやひじきなどの海藻類とまだまだあります。
これらは、魚とはまた違った処置や冷凍の方法になりますので、また次にご紹介しますね。
冒頭でも述べましたが、現代で問題視されている魚離れは、とくに魚料理の味が嫌いなのではなくそれ以外にあります。
それぞれの家庭に合った味と調理で食べやすくして頂くために、料理学校ではそういった料理も数多く作っています。
島国である日本ならではの魚を食べる食文化は消したくないものです。
「魚は冷凍しても栄養素は変わらない」ということを念頭に、健康に気を遣い、魚料理をもっともっと食卓に出していただけたらと思います。
